comicbird’s blog

備忘録として我が家所蔵の漫画を全て記録しておこうと思いつき、始めました。

動物のお医者さん1:佐々木倫子氏

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 昭和63年連載開始作品です。

 

 ついにここまでたどり着きました。佐々木氏の大ヒット漫画です。

 昭和の作品だったとは感慨深い…。

 

 第一話:イントロダクション

   あらすじ;高校三年生の主人公と友人は、普段使用している通学ルートでしばしば動物のスプラッタな死体を目撃する。ある日スプラッタを回避して一息ついたところ、般若のような形相をした子犬と遭遇する。子犬はそこの大学で獣医学部教授に飼育されているようだ。主人公は教授に思い付いた疑問を投げかける。すると教授に”君は獣医になる!”と予言され、加えて子犬を引き取る羽目になった。

 

 本格連載で、一話ずつのお話も前の作品たちと比べて大分短い構成のようです。

 記念すべき第一話で登場するのは、主人公”西根公輝”、友人”二階堂”、そして”漆原教授”です。

 ほぼ無表情かつロ―テンションの主人公の隣で騒ぎ続ける二階堂。この対比も見どころの一つです。さらに漆原教授に至っては異次元レベルです。初対面で主人公が獣医になると予言した漆原教授。これからどんな化学反応が起きるのか期待せずにはいられません。

 

 第二話:主人公の家族紹介

   あらすじ;教授に押し付けられた子犬を家に連れて帰った主人公。同居人の祖母と飼い猫ミケに紹介を済ませ、名前を決めるべく検討を始める。

 

 今回は主人公と暮らしている家族が大体出てきます。祖母を筆頭に猫、鶏と続き、性格も個性豊かです。すべて自己主張強めで、紹介順番が素晴らしいです。お話終わりの間際に登場する西根家最強の生物鶏ヒヨちゃん。インパクト充分です。

 対して終始ロ―テンションの主人公と、顔は般若なのにおとなしそうな子犬。キャラ設定の振り幅は十分です。

 そこに友人二階堂も加わり、バラエティーに富みすぎています。

 ちなみに、今回出てきた動物をすべて『チョビ』と呼ぶ友人の性質はその後ほぼ見かけなかったような気がします。この回限定と思われます。

 

 第三話:主人公の進路決定

   あらすじ;子犬チョビが病気になったようだ。色々事情が重なり、大学の動物病院へ行ったところ、チョビを押し付けた教授と再会する。主人公は教授のお手並み拝見と観察していたら、全くもって獣医とは思えない知識の無さと手際の悪さ。挙句の果てに友人と共に病院の雑用を手伝わされ、お礼にもらったスナネズミも友人が鼠を大嫌いなため、また主人公が引き取ることになる。

 結局買っている動物が病気になったら自分で治療した方が便利と悟り、教授の予言通り獣医学部を目指すことにした。

 

 本編への導入部分の仕上げとなります。

 

 子犬を病気にして教授と接点を持たせ、第一話の教授の予言を活かして話は進んでいきます。教授が規格外のポンコツであることを逆手にとって主人公に獣医学部進学を決定させる流れは見事です。

 感動も大いなる決意もなく、状況の流れで進路を決定する下りは主人公の性格ときちんと一致していて違和感がありません。

 そこに友人がいい距離感でくっついてきており、話が単調にならず、大きな役割を果たしています。

 ちなみに子犬チョビが女の子であることがついでのようにさらっと紹介されています。

 

 第四話:もらったスナネズミのその後

   あらすじ;無事志望大学に入学した主人公と友人。主人公宅ではスナネズミが鼠算式に増加いていた。2匹とも雄と言われたが、どうやら1匹雌だったようだ。どちらが雌なのか、ネズミの文字を触るのも見るのも怖気が走る友人と観察を始める。

 

 最後に第三話でちょろっと出した友人の”大の鼠嫌い”をこれでもかと活かしまくった回になります。スナネズミの話をただ描いただけでは面白みに欠けます。この”鼠嫌い”を存分に絡める事で飽きずに読み進められ、気が付くとスナネズミの生態までわかってしまうという巧みさ。さらに主人公の飼い猫も参加させて、楽しめることこの上ありません。

 関西弁で心の声を話す猫!その後も素晴らしい仕事を繰り広げてくれます。

 

 第五話:菱沼さん初登場

   あらすじ;晴れて獣医学部に進んだ主人公と友人。飼育実習で豚のお世話をしていたところ、獣医学部博士課程所属の菱沼聖子氏のアドバイスをたびたび受けることとなる。最近豚の尾かじりが発生しており、主人公と友人はそれを解決すべく考察を始める。

 

最重要人物の一人、菱沼さん初登場回です。

ちらほら片鱗は見えますが、比較的マイルドに描かれています。

 メイン内容は豚の尾齧り事件ですし、教授のキャラの方が目立ちます。ひょっとしたら菱沼さんのキャラ設定がまだ固まっていなかったのかもしれません。

 今後どんどんファッションととも特異な存在感を発揮していくキャラです。

 

 第六話:主人公が初めてチョビを自身の大学へ連れて行った話

   あらすじ;四六時中はチョビをかまってあげられない主人公。祖母の旅行も重なってミケの面倒も見る必要がある。そこで大学へ連れて行くことを思いつく。

 その日たまたま避妊手術予定の猫がおり、ミケは患畜と間違えられる。腹の毛を刈られ、あやうく腹まで切られるところだった。

 

 この回を境にチョビは大学に入り浸る犬となります。今回だけですが、ミケも加わり教授の率いる獣医学部の雰囲気を楽しむことができます。

 二階堂以外の大学の同級生も何人か登場しますが、本人より先にペットを登場させるところに佐々木氏のセンスを感じます。…名前だけ菅原教授も登場した気がするのですが、何回見返しても見つけられない(-.-;)y-~~~別の回なのか…老化が進んでいるのか…
 とにかく、今後の登場人物の布石が散りばめられている回です。

 

 第七話:血液検査のひと騒動

   あらすじ;健康診断で血液検査を受ける主人公ら。獣医学部では血液を自分で採取して持っていく。結果待ちのところ、人間ではない血液があったようだ。漆原教授によると犬の血だという。

 

 血液検査というテーマを軸に、菱沼さんの特異体質と一般人とは違う感性を説明する回となります。さらに主人公の同級生、清原の性格も紹介されています。

菱沼さんはその常人とはかけ離れた数々の特徴でメインキャラとなりますが、清原も時々登場して良い味を出すこととなります。

 

 第八話:セリカと菅原教授

   あらすじ;実習で馬の世話をしている主人公達はその内の1頭、セリカの悪戯に辟易していた。しかし、馬好きで有名な菅原教授は悪戯をされたことはないという。

 

 名前だけ登場していた菅原教授が生身で初お目見えです。公衆衛生学…。当時からして初耳。何ですかそれ?何する学問??無知な自分にとってはかなりマニアックな科目の教授です。

 こちらの階では菅原教授の性格や好みが紹介されています。いつも鼻を垂らしていて悪戯好きな設定の馬セリカと教授が共に主人公と絡み、話が広がります。

 しかし、実習中に来ていた主人公の作業着が”KENZO”!!作業着のブランドではありませぬ!

 

第九話:西根家最強生物ヒヨちゃんとチョビの攻防

  あらすじ;西根家に長らく君臨していた鶏ヒヨちゃん。シベリアンハスキーのチョビが加わり、政権交代を期待する主人公達。2年前チョビの宝物が盗難にあい、ヒヨちゃんが疑われるもチョビがボロボロになり、政権交代は実現しなかった。そして現在何やら事件の真相が解明しそうである。

 

 今回は主人公宅の鶏ヒヨちゃんの紹介となります。ラスボスがごときヒヨちゃんに加え、それに輪をかけて凶暴なお隣の鶏4羽も登場してチョビと三つ巴を繰り広げます。このお話でヒヨちゃんがただただ乱暴なだけではないということがわかります。

 

第十話:二階堂と鼠が出会ったら

  あらすじ;ある日コピー室で主人公の友人二階堂はスナネズミと遭遇し、気絶する。それほど嫌いな鼠が次の日の寄生虫学実験で扱われるという。何とか鼠との接触を避けるための二階堂の奮闘が始まる。

 

 二階堂の鼠嫌いを如何なく紹介する回になります。鼠の痕跡は見逃さない二階堂。鼠らしい鼠、ラットを激しく嫌う二階堂。追い詰められた二階堂はどう切り抜けるのか。佐々木氏の才能が冴え渡ります。

 

第十一話:獣医学部の運動会

  あらすじ;主人公はコピー室でけったいな箱を見つける。女性大学院生菱沼さんによると、運動会の直検競争に使うという。様々な目標を掲げて学部、及び教授たちの戦いが始まる。

 

 見たこともない物体で、嫌でも運動会に興味を惹かれます。

 小学校時代とはまた違った大人向けの、しかも獣医学部独特な種目の数々でこのイベントの雰囲気を堪能することができます。

 

 making of動物のお医者さん

 

 漫画家さんがどのようにお話を作っているか垣間見れる貴重なエッセイ漫画です。人脈の大切さを思い知ります…。