comicbird’s blog

備忘録として我が家所蔵の漫画を全て記録しておこうと思いつき、始めました。

動物のお医者さん第3巻 佐々木倫子氏

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第一話:菱沼さんの異性関係

  あらすじ;人間離れした体温、低血圧を誇る大学院生の菱沼聖子氏は前日に同僚の研究生たちと酒盛り&研究室に泊まったという状態で健康診断へと向かう。採決後しばらく歩いていたら、学生たちが悲鳴を上げて逃げていく。自分の腕を見ると流血し続けていた。医務室へ戻り、絆創膏を頼んだが、居合わせた医師たちは菱沼氏そっちのけで点々と落ちている血をふくのに必死だ。菱沼氏はその中にとある若い男性医師に気づく。

 

 どれをとっても常人離れしている菱沼さんに恋の予感が!という会です。前半の菱沼さんの健康診断も見どころ満載ですが、後半の菱沼さんが男性と会っているという情報を得た主人公始め各レギュラー陣の反応がバラエティー豊かで素晴らしいです。菱沼さんに良い方が見つかることを願わずにいられません。

 

第二話:菌を特定しよう

  あらすじ;主人公ハムテルたち獣医学部生は微生物学の実習で、それぞれ配られた道の菌X(エックス)を突き止める課題に取り組んでいた。教授のようなプロならば即特定可能な菌もヒヨっこ同然のハムテル達には至難の業だ。何とか教授からヒントを勝ち得るべく一芝居を打つが、ますますわからなくなってしまう学生たちであった。

 

 獣医学部生がどんな授業を受けているか知ることができる回です。一般人にはなかなか覗けない世界です。佐々木氏の漫画は、雑多なものから専門的なものまでちょっとした知識を上乗せできる情報がよくちりばめられています。それ故、飽きることがありません。今回は破傷風菌をばらまいた時の対処法を学べます。

 

第三話:絹代さんを祥平さん

  あらすじ;吹雪の真夜中主人公宅に無言電話があった。睡眠を妨害された祖母はご立腹。翌日主人公ハムテル&友人二階堂達とお喋り中近所に泥棒が入ったと知る。物騒なため、二階堂も止まることにしたところ、段々天候も悪化して再び吹雪となっていく。とりあえず賑やかに過ごそうと努めていたところ、外から大音量が響いてきた。

 

 佐々木氏定番のミステリー調に乗せてハムテルの両親初登場になります。お母様、絹代さんは大正モダン風で素敵です。キャラクターデザインの年代を考えると、主人公が昭和、絹代さんは大正、祖母が明治という印象を受けます。ちなみにお父様、祥平さんは日本人のようですが、ビジュアル的には英国紳士風です。佐々木氏の漫画キャラは美しければ美しいほど天然で抜けている傾向があると感じるのは私だけでしょうか。個人的にはそのギャップもたまりません。

 しかし、友人二階堂はほぼ西根家の家族と化しているようですねー。

 

第四話:ミケとチョビ

  あらすじ;主人公ハムテル宅の飼い猫ミケと初対面を果たした頃のチョビの話。

主人公宅の飼い犬となったチョビはミケを気に入ったようだが、ミケは興味がない。

ハムテルたちも躾などの面で助かるため、2匹に仲良くしてほしいと願っていた矢先、チョビが近所の大型犬ジョンの敷地へと入り込んでしまう。

 

 チョビがもらわれてきた頃のお話です。時々昔の話がまるまる1話、ということもあります。チョビとミケが仲良くなるまでが描かれており、ミケの姐さんな性格もより詳しく紹介されて、ますます頼もしい存在です。

 余談ですが、中盤に2巻7話に登場した友人二階堂のシャツの柄、狐の仮面とちょきんぎょが再利用されています。

 

第5話:所属講座決定

  あらすじ;主人公ハムテル達は3年の終わりに近づき、それぞれ所属講座の検討を始める。様々な思惑を持つ学生達を尻目にハムテルは漆原教授の”病院”希望で確定している。漆原教授の異常っぷりは全学生周知されており、ハムテルはなんの障害もなく”病院”で決定予定だった。しかし、希望者が2名しかいない事に不満を感じた漆原教授が宣伝を打ってきた。

 

 世の若者が皆通る進路決定がテーマです。やりたいことがあれば実現可能な方法がある幸運なこの国で、あまりに恵まれすぎてかえって目標などを持たない若者が多い実情をよく示しているお話でした。人生の充実や渇望はむしろ不自由や制限、理不尽を克服しようとする意思や情熱がエネルギーとなるのだろうと思う今日この頃です。ハムテルは目的を持つ少数派に入りそうです。

 

第6話:講座の始まり

  あらすじ;主人公ハムテルは希望通り、友人二階堂は金魚の糞の如く病院の講座に所属することとなった。アフリカンな教授室で日々吹き矢作りに励む。

 

 いよいよハムテル達が獣医になるべく本格的な修行に入ります。吹き矢…。一般的な獣医学部の講座でどのくらい作成されるのかわかりませんが、漆原教授の講座では吹き矢は日常いつでも作成されているようです。吹き矢…。現在の日本で使いどころはあるのでしょうか…。そのような疑問に答えてくれる回になります。

 大学院女性の菱沼さんの飼い猫初登場の回ともなっており、ハムテル宅のペット、チョビ、ミケに引き続き漆原教授の被害を受けます。

 読み終わった感想としては、絶対見えないところで吹き矢の在庫で溢れかえっているはずだ!と思うのです。

 

第七話:菱沼さんの就活

  あらすじ;春、卒業生をスカウトする企業の人買いが訪れるようになった。公衆衛生学講座の菅原教授は所属院生菱沼聖子氏をとにかく売り込みたいが、企業の求める人材にはなかなか当てはまらない。そんな中、菱沼氏と同期で、とある企業に就職した男子卒業生が人買いとして訪れた。

 

 今は変化しているかもしれませんが、当時の医学系大学生の就活の様子を知ることができます。企業が求めるのは新卒男子。”博士課程3年で女で菱沼である”。これだけでもう菱沼さんが企業に必要とされる人材でないことがわかります。ダメ押しで”菱沼である”というフレーズにより、強烈に印象付けることができます。今まで菱沼さんの常人離れっぷりを表現し続けてこその効果です。

 

第八話:保護した九官鳥

  あらすじ;ある日大学院生菱沼聖子氏が九官鳥を保護し、公衆衛生学講座の教室に持ち込んだ。新聞に迷い鳥の広告は載せたが飼い主は現れない。絶え間なくしゃべり続ける九官鳥に繊細な菅原教授のハートは限界へと近づいている。ハムテル達は九官鳥を飼っている人リストを入手し、飼い主探しを始める。

 

 もし九官鳥を飼ったらどんな日常になるかがわかります。九官鳥に限らず、言葉を覚える鳥が人間のどんな言葉を切り取って覚えるかは鳥それぞれで予測できないもので、それが面白くも恐ろしくもあります。

 加えて菅原教授が日頃自身の講座でいかに神経をすり減らしながら生活しているかも描かれています。

 

第九話:二階堂家の猫

  あらすじ;主人公の友人二階堂は最近家でアレ🐀の存在を感じ、自宅を避けがちである。主人公ハムテルが飼い猫ミケのレンタルを提案するも、実は二階堂宅にも猫がいるという。だが、餌はやっているが、姿をきちんと見たことはない。家族、特に弟妹に見つかると酷い目に合うという。ある日二階堂は餌を食べていた猫と目が合う。心当たりのある二階堂は真相を明らかにすべく獣医のもとへ急いだ。

 

 記念すべき二階堂の家族初登場です。個性溢れる弟妹達。二階堂の鼠嫌いを存分に活かしつつ謎の猫、弟妹達との絡みへと展開し盛り上がっていきます。二階堂の常に受け身で苦悩し続ける性格がどう培われたか垣間見ることができます。

 

第十話:持ち込まれる患畜

  あらすじ;近頃主人公ハムテル宅に患畜が持ち込まれるようになった。祖母が近所に言いふらしていたのが原因らしい。しかし、学生のハムテルが飼い主たちの期待に応えらるはずもなく、祖母に釘を刺して自身もなるべく自宅にいないようにする。ある日ハムテルが大学滞在中の夜に白目をむいて気絶した犬が、同時に祖母のいる自宅にぐったりした文鳥が持ち込まれる。

 

 期待され、がっかりされる経験はいいものではありません。しかし、期待に応えようともがく経験はまた成長の要因ともなりえます。ハムテル達はこの種の様々な経験を繰り返して獣医へと近づいていくのだろうなと感じるお話です。

 ちなみに祖母の災難は身から出た錆ですが、やはり祖母。文鳥を助ける度胸の据わり方が半端なく、頼もしい限りです。

 

making of パート3

 漫画の資料を上手に撮るためのカメラについて描かれているエッセイになります。当時はスマートフォンなどあるはずもなく、デジタルカメラもあったのかどうか。今はなんと便利な世の中かとしみじみします。