comicbird’s blog

備忘録として我が家所蔵の漫画を全て記録しておこうと思いつき、始めました。

近未来不老不死伝説バンパイア参 徳弘正也氏

VOL.18:20戦士の影山

  あらすじ;影山が人知れず昇平宅の前に佇む間、昇平は一晩中マリアを抱き続けた。翌朝、未だ小谷氏に騙された傷の癒えぬ昇平に影山はマリア会の歪みを正す役割のマリア20戦士の存在を明かし、自分はそこに属していると語る。昇平がやらずとも天使粛清は行う予定で、20戦士は十文字篤彦が生前独自に育て上げた精鋭達であり、篤彦以外に存在もメンバーも知らされた事は無く、原理派兵士の中枢に今も紛れ込んでいると言う。

 

 影山は第3の勢力である事が明らかとなりました。阿南将軍の推測は正しかった様です。原理派天使達が革新派に敗れたタイミングで第3の勢力、マリア20戦士の存在を登場させ、新たなる対立構造が生まれます。物語の構成が複雑になりすぎる事なく見事です。阿南将軍達が見ているであろう監視カメラに向かって不敵な笑みを見せる影山。計り知れない不気味さが完璧に表現されています。今後の展開が楽しみすぎます。

 

VOL.19:悪魔の教義

  あらすじ;マリア会で20天使と軍首脳合同会議第一回目が行われた。昇平とマリアの性交中の映像が流され、阿南将軍により今のマリアは昇平の実子であり、神ではないとの説明がなされる。天使達が映像に釘付けの中、平山氏はマリアとの性交で昇平の能力がより高まっていく事を懸念する。一方何もかも筒抜けであったと知った昇平は自宅で大っぴらにマリアと交わり続ける。そんな中いつもの様に影山が昇平宅前に佇んでいると、ブーちゃんが現れた。

 

 原理派と革新派の会合初回は阿南将軍の独壇場です。男しか残っていない天使達は初めて見る快楽に溺れるマリアから目が離せず、平山氏以外は阿南将軍の説明に疑いを持ちません。刺激的な映像で思考能力を削いで主張を通す、人心コントロールもお手のものです。高い能力を持つに至った人物は、それ故に使い方何如によっては天国か地獄の極みを味わう事ができます。阿南将軍の行き着く先はどちらでしょうか。

 

VOL.20:阿南の目的

  あらすじ;ブーちゃんのマリアがここにいると危ないかもと言う言葉により、影山は昇平とマリア、更にブーちゃんも連れて山奥の一軒家へ移る。いざという時のために用意しておいたのだと影山は言う。一方合同会議終了後釈然としない平山氏に、阿南将軍はマリアが昇平の子であると言うデータは全て捏造であり、マリアを捉えて不老不死研究を行うのが真の目的であると語る。そして本田マリアは神ではなかったとの教えがマリア会に着実に広められていく。

 

 阿南将軍の本当の目的が明らかとなります。結局はマリアがずっとずっと戦い続けてきた者達と変わらないと言う事になります。不老不死は確かに多くの人が一度は願うと思われます。自身の目的の為に殆どのマリア会信者を騙し、邪魔者は次々と始末し、マリア達を追い詰めつつある手腕は凄まじいものがあります。マリアを捕らえ、マリアを利用して、もし不老不死を手に入れたとして…その先に阿南将軍の満足はあるのでしょうか。

 

VOL.21:影山の正体

  あらすじ;都会の光も喧騒も全く無い漆黒の夜の中、影山は1人横になりながら眠る事なく回想する。影山は十文字篤彦の脳が移植された身体であった。十文字篤彦として産まれ落ち、すぐにマリアに両親を殺されマリアと暮らした10年間、その後マリアの元相棒で育ての親と過ごした日々、そしてマリアの片腕を見つけて十文字グループの幹部に登り詰めた後唐沢に撃たれるまで、全てを思い返していた。

 

 影山が十文字篤彦の脳を移植された身体である事が判明し、影山の回想により篤彦の人生が詳らかとなっています。人の人生目標は5歳位までに決まると言う説がある様です。篤彦はその時期をまるまるマリアと二人きりで過ごしている事になります。マリアと会えなくなってからもマリアが篤彦の中で篤彦の根幹とも言える存在となっている事は、その説を知るとなるほどと思います。影山としてマリアの前に現れた十文字篤彦。今後の展開が気になります。

 

VOL.22:幸福の日々

  あらすじ;翌朝影山は薪でご飯を炊き、朝食を作る。食後昇平は薪割りを、影山はマリアに誘われて2人で森に狩猟へと出掛ける。マリアは木の蔓や枝で弓矢を作り、雉を仕留める。影山は子供の頃マリアが自然について語っていた事を思い出す。それは先程マリアが弓矢を作りながら語っていた内容と同じであった。影山は今のマリアと昇平の世話をしながら昔のマリアとの生活を思い出し、幸せであったと夜に独り呟く。

 

 都会の便利機能が皆無の中、薪に着火可能な影山の指レーザーは大変便利です。そして竃で炊いたご飯は、手間からその美味しさから現代では贅沢の極みです。篤彦が昔マリアと暮らしていた経験は原始に近いもので、今の潜伏生活に大いに役立っている様です。それ故に昔のマリアとの生活とも近しく、影山の篤彦時代の記憶が刺激され、思い出が呼び起こされやすい様です。篤彦の一番美しかった思い出を堪能できる哀愁に満ちた回となっています。

 

VOL.23:新しい神

  あらすじ;昇平達が山奥の生活を満喫している間マリア会はひたすら集会で昇平とマリアが交わる映像を流し、本田マリアを神としない思想を信者に浸透させ続ける。昇平と影山はマリアが大量に釣った魚を2人で一緒に捌いていた。捌きながら昇平はマリア会の改宗が進んでいる事を懸念するが、影山は信仰はそう揺らぐものではないと楽観的である。更に影山は昇平から今の篤彦への思いを聞き号泣する。

 

 影山こと篤彦にとっての信仰と一般的な信仰との甚だしい乖離が明らかとなる回です。昇平に語った「信仰は命よりも重い」と言う言葉によく表れています。篤彦にとってマリアに対する信仰は自分の全てであり、自分以外の人々も同じ信仰を持っているものと疑っていない様です。この辺り、篤彦が未だ他人の立場で考える事の出来ない人間である事がよく解ります。訪れた20戦士ホログラム数の減少に激昂した影山。しかしその後状況分析を始め、思索を深めていく所などやはり只者ではない部分が垣間見えます。

 

VOL.24:クローンの館

  あらすじ;阿南将軍は自ら車を運転し、平山氏を郊外山中の洋館へ連れて行く。水素爆弾に耐えうる館のエレベーターに乗り辿り着いた遥か地下には秘密裏の不老不死研究施設があり、選び抜かれた生物学者達が勢揃いしていた。彼等はマリアを捕えた暁には、本格的に研究をスタートさせると言う。施設の頑健な扉の奥には必要に応じた様々なマリアのクローンが作成されており、これらを駆使して阿南将軍はマリアを手に入れると言う。

 

 不老不死に取り憑かれた阿南将軍の本気がよく伝わってくる回です。本田マリアを捕えてその身体を研究しても自身が不老不死になれる保障も無いわけですが、阿南将軍は微塵も疑っていない様です。ひたすら不老不死実現に向けて爆進しており、迷いがありません。良くも悪くも人が夢を実現させる為の必要な要素が全て詰め込まれています。阿南将軍の夢は一般的に受け入れられにくいですがその情熱、手腕は認めざるを得ません。

 

VOL.25:生まれくる神

  あらすじ;マリアの赤ん坊クローンに指名が入る。その頃影山からマリア達に武器が配られ、襲撃があるまでいつも通り暮らす事が決まった。そしてマリアのお供で影山は森に狩猟へと共に向かう。早めに狩猟が終わったので、影山はマリアを国営農場が見える丘へ連れていく。国の供給熱量自給率を40%から80%へ引上げたマリア会の功績を誇らしげに語る影山に、マリア会は間違っているとマリアは言った。一方マリア会ではクローンの神マリア出産映像が流されていた。

 

 影山が今までマリアの為と行ってきた活動を真っ向から否定される回となります。マリアは篤彦と言う人間の本質を容赦なく、鋭く影山に語ります。マリアの前にいたのが影山であろうと篤彦であろうとマリアの言う事は変わらなかったでしょう。昇平を簡単に信じさせる事はできても、マリアを騙す事はできません。前作最後でマリアを見限りながら、今作で影山となって再びマリアの為と尽力する影山こと十文字篤彦。彼の本音は何処にあるのでしょうか。

 

龍王峡の冒険:巻末エッセイ漫画となります。今回は山奥背景の為の取材旅行が描かれています。良い背景は作品の質を高める為に欠かす事は出来ません。徳弘氏の涙ぐましい努力を知る事ができます。