comicbird’s blog

備忘録として我が家所蔵の漫画を全て記録しておこうと思いつき、始めました。

近未来不老不死伝説バンパイア5 徳弘正也氏

VOL.34:マリア処刑

  あらすじ;人知れず本体のマリアが拘束されている中、マリア会集会では本田マリアの公開処刑が行われようとしていた。十文字篤彦はそれを阻止すべく、潜伏している潜水艦から中国へ核ミサイルを発射しかけたが、火炙り直前に始まったマリアの叫びを聞き、処刑されるマリアはクローンだと気付く。そして今までも数々のマリアのクローンが駆使されていた事を確信し、新たなる勝負へと決意を固める。

 

 マリアの排泄をお世話するクローンのマリアに設定されたプログラムがお下劣気味にマニアックなので、受付けない方も出るかもしれません。このお世話を受けるだけでもかなりメンタルをやられそうです。マリアには今、充分に哀しみに浸る暇はあまりなさそうです。その頃阿南将軍は集会でマリア処刑の演出を成功させ、更に地位を確実にします。個人や大衆の心理操作について並々ならぬ能力を持っている事がわかります。

 

VOL.35:実験動物マリア

  あらすじ;マリアの前に姿を現した阿南将軍は、これからマリアが不老不死の研究が成功するまで生きながら身体を切り刻まれ続ける事を告げる。一方平山氏は自宅で1人、本当の天使は昇平、ブーちゃん、影山の3人ではないかと苦悩する。そして篤彦は自身の身体に翼を付ける手術を受ける。その後も阿南将軍は意識の無いマリアを犯し続け、その間国はマリア律法が謳う正しい社会が日々繰り広げられた。しかし、ある日から阿南将軍の顔色は悪くなっていった。

 

 阿南将軍、平山氏、篤彦それぞれの行動が描かれています。苦悩する平山氏が印象的です。3人の中で平山氏が一番通常人寄りの精神を持つ事が伺えます。阿南将軍と篤彦は尋常ではない強さの、ブレない目標があります。その点でそれ程強いビジョンが見受けられない平山氏は、色々悩む事と思われます。悩みとは新しい考え方に気付くチャンスとも捉えられます。平山氏が上手く気付けるかは別として、その様な事も教えてくれる回の様な気がします。

 

VOL.36:阿南将軍への罠

  あらすじ;阿南将軍はマリアの口車に乗り、監視カメラを切らせて起きているマリアを堪能し始める。マリアの要求に応じて阿南将軍がマリアに挿入しようとした瞬間、マリアは阿南将軍の喉元に喰らい付く。阿南将軍がどんなに足掻こうとマリアを剥がす事ができない。マリアはテレパシーが通じる様になった阿南将軍に、黒焦げを回避したければマリアの拘束具に設定されている電気ショックを切るよう要求する。

 

 遂にマリアが動きます。阿南将軍はたとえ恐ろしい幻覚が視える様になっても、マリアの肉体の魅力には抗えない様です。男の悲しい性でしょうか。性欲は人間の根源的な欲で、本人が冷静な判断を下すのは相当難しいと思われます。マリアは永い永い経験からよく熟知していたのかもしれません。阿南将軍の欲望を上手く刺激した上で自分の能力、身体を全て使って自由を勝ち取るべく突き進みます。

 

VOL.37:脱出

  あらすじ;重戦車ロボットに破壊された容器から何体ものクローンマリアが襲って来る。標的の阿南将軍は重戦車の裏に避難し、重戦車の攻撃が再開されてクローンは全滅する。その後マリアは阿南将軍指示により複数ヶ所撃たれ、両腕を引きちぎられそうになるが、ギリギリでかわして重戦車の機能を停止させようとする。その間阿南将軍は部屋から脱出しようとするが、最近視る様になった以前始末した小谷清子氏の幻覚が再び現れて動けなくなった。

 

 表面的には気付かなくても、阿南将軍の中に無意識下で良心の呵責などがあったのでしょうか。それはそうと不利と悟ると凄まじいまでの命乞いを始める阿南将軍は清々しい程です。マリアはそんな人間を山と見てきたのでしょう。相手にもしません。そしてマリアは自身の力で自由を取り戻し、やっと昇平を失った哀しみに浸る時間を得ました。マリアの願いはずっと昔から変わりません。しかし人間がいる限り、邪魔をする者が絶えないのは悲しい話です。

 

VOL.38:全てはマリアのために…

  あらすじ;体の機能も万全に、翼も取り付けて仕上げにヅラを選び、十文字篤彦は部下を連れて潜水艦を出発する。マリア会では全国から原理派兵士を集めた集会が開かれ、阿南将軍紹介のもとに新しい神マリアが登場する。兵士達のボルテージが最高潮に達する中、集会に紛れ込んでいた篤彦はいきなり翼を広げ、「全てはマリアを守るため…」と飛び立ち、神マリアの近くまで行くと神マリアの額を撃ち抜いた。

 

阿南将軍がマリア会に新しい神マリアを掲げて正に天下を取ろう、という瞬間を狙ったこれ以上無い最高のタイミングでした。阿南将軍を天国から一瞬で大人数の前で言い逃れさせずに地獄へと突き落とし、邪魔者の排除と自身の返り咲きを同時に行なってしまいました。この一瞬に向けて気の遠くなる様な時間を掛け準備してきたと言う事で、自分演出に関して他の追随を許さない篤彦、流石と言わざるを得ません。

 

VOL.39:全てはマリアを守るために

  あらすじ;教祖篤彦が生きていたと驚愕する信者達に篤彦は神マリアの人工知能脳みそを示し、神マリアはクローンであった事を明らかにした。阿南将軍の側近達は阿南将軍に説明を求め、阿南将軍は騙すつもりはなかったと許しを乞う。更に締め上げられる阿南将軍を尻目に平山は、篤彦に10年前マリアを武器商人に売り渡した事実を挙げ、篤彦に教祖を名乗る資格はないと主張する。

 

 平山氏は最期に正義を見せました。しかし篤彦を見抜き、独り訴えても準備万端の篤彦の前では通用しません。篤彦に危険因子と看做されれば死、あるのみです。それだけ平山氏は篤彦の本質を突いていたのでしょうが、感情の昂るままに主張してしまい最悪の結果となってしまいました。一方阿南将軍は投獄されましたが、命は助かりました。抜け殻となっても篤彦の言動の矛盾に気付く所は流石です。阿南将軍がその後、生き延びられたか知りたいものです。

 

VOL.40:マリアの決意

  あらすじ;十文字篤彦がマリア会革新派と戦争を始めようしているのを察し、人々は東京から逃げ出す。忘れ去られたマリア会聖地に潜んでいたマリアは、街の様子から篤彦の行おうとしている戦争を知る。マリアは篤彦が長い年月をかけて入念に準備し、独裁者に返り咲いた手腕は憤りながらも見事と認めた。しかし戦争だけは止めねばならないと客が1人もいない電車でマリア会集会所へ向かう。

 

 マリア会幹部の粛清を済ませ、革新派一掃を目指す独裁者篤彦。篤彦は海中に拠点を構え、人知れず時を費やし、針程の隙も無い様入念すぎる準備を整えて今の最高の環境を手に入れました。自分の一挙手一投足で思い通りになってくれる大衆に満足げな篤彦。心酔し切っている信者達は騙されているとは夢にも思っていないでしょう。しかし今は完璧に見える篤彦も、どこから綻びが生まれるか分からないのが世の常です。

 

VOL.41:地下より永遠に

  あらすじ;昇平に貰った指輪をはめてマリアは集会所へ入って行く。篤彦が新しい側近10名の一級天使を紹介していく裏で、マリアは警護の兵士から武器を奪い、その後の兵士達には神マリアを名乗りながら集会会場へ向かう。篤彦が天使の紹介を終え、演説を続けようとした瞬間、マリアが剣を構えながら篤彦へと向かって来る。一瞬驚愕し、篤彦は私は神マリアだと言うマリアの言葉を消す様にマリアをクローンと決めつけ指のマシンガンでマリアを蜂の巣にする。

 

…大変、大変名残惜しくはありますが、これにて名作バンパイアは完結となります。

今や一国の独裁者となった篤彦にマリアは昇平の指輪と共に斬り込み、神マリアを名乗ります。最後にマリアに自分の本性を告げ、マリアの首を刎ねた篤彦。昔、赤ん坊の篤彦を殺そうとしたマリアの判断は正しかったと思われます。しばらくは篤彦の天下でしょうが、他人の言葉に耳を傾けず、自分しか愛さない篤彦の未来に本当の幸せはあるのでしょうか。マリアは残念ながら戦争を止める事は出来ませんでしたが、本田マリアとしての生を全うしました。幸せとは何であるか、人生を生きるとはどういう事か、深く考えさせてくれる傑作と言えるかと思います。

 

新作への道ロードオブしんさく

 次の徳弘氏の新作に向けた調べ物や取材の様子などが紹介されているエッセイ漫画です。全くブレず、エロエロ要素満載の予感がします。