comicbird’s blog

備忘録として我が家所蔵の漫画を全て記録しておこうと思いつき、始めました。

動物のお医者さん2:佐々木倫子氏

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獣医学部での生活をより詳しく描いていく第2巻。

女性大学院生、菱沼さんの登場回数も格段に増えます。

 

第一話:菱沼さんと菅原教授

  あらすじ;大学院生、菱沼聖子氏は現在所属している公衆衛生学講座にてクラミジアの研究中。研究に必要な細菌を培養しようとしているが、なかなかうまく増えない。菅原教授に苦言を呈され、菱沼氏は掲示板に最近のお世話メモを貼ることにした。すると明らかに他人が書いたいたずらメモが貼られるようになり、菱沼氏の犯人探しが始まる。

 

 公衆衛生学講座はどのような講座かを紹介するとともに、菱沼さんと菅原教授や他の公衆衛生学講座生との普段も描いています。

 毎日ファッショナブルな衣装に身を包み、学部特有のエピソードを交えつつ、無関係なメモを貼り続ける犯人を突き止めていく過程は果てしなく馬鹿馬鹿しく、しかしなかなか触れることのない獣医学部の日常を垣間見ることができるお話です。

 

第二話:チョビ、モズを拾う

  あらすじ;飼い犬チョビの気分転換にと参加したバードウォッチングでモズの雛を保護した主人公達。モズを野生に返すまでのお世話がはじまる。

 

モズの生態について知ることのできる回です。カッコウを育てる、ハヤニエをする…など知識が増えました。ボサボサだが、これでもかとモフっているビジュアルが野生の鳥の雛らしく、佐々木氏のデッサン力の確かさがわかります。特に足にかかる腹の羽毛はたまりません。

 個人的に雛の”ピルピル”という鳴き声がお気に入りでした。さらに主人公が撮った口を開けた雛の写真三連発も素晴らしいチョイスです。

 

第三話:獣医学部試験

  あらすじ:大学で試験シーズンが始まった。主人公はペット達の世話を滞らせぬよう、今まで一度も単位を落としたことがない。追試に怯える周囲の学生は御利益にあやかろうとする。そんな中、一風変わった組織学試験でミスを犯した可能性に気づく主人公であった。

 

 一般人はあまり経験することのない獣医学部の試験風景を描いた回です。私事ですが、追試の存在しない筆記試験だけの大学に通っていた身としては”再追試まであるのか!”と驚愕したものです。

筆記だけでなく口頭もあり、顕微鏡を一つ一つ覗きながらぐるぐる回る体を動かす試験まで何とも多彩です。

 

第四、五話:夏休み中の家畜試験場合宿

  あらすじ;なんとか試験を乗り越えた主人公達獣医学部生は、漆原教授と共に夏休みのはずなのに家畜試験場へ2泊3日の合宿にやってきた。そこには羊、ヤギがおり、プルプルという大型凶暴羊がいた。主人公は避けようとするが、何故かプルプルと縁が切れず、最終的にはプルプルにまたがり、近所一周毛刈りの旅へ行くこととなる。(第4話)

  合宿所では食事環境が悪く、学生達は腹をすかせていた。実習2日目の夜、限界を迎え、食物を調達しようと外出する学生達。田舎の夜道はなかなか目的地へたどり着けない。次々脱落していく中、最後まで頑張る主人公+友人二階堂+チョビも判断力が鈍る。なかなか戻ってこない学生に気づき、追跡を始める教授達。食物にはありつけるのか。

 

 2話の続きもので、前半は実習の紹介、後半は実習の内部事情が描かれています。個性の際立つ羊、プルプルの登場で単純な紹介ではなく、お笑い要素満載の内容へと変化します。個人的な今回の名フレーズは”イキイキ キラキラ プルプル”です。

 後半は学生中心の問題解決奮闘話です。この回で、実習の表面だけでなく内部まで見ることができます。学生が実習中どのように過ごすのか、普通実際に参加しないとなかなかお目にかかれない場面がちりばめられています。

 

第六話:菱沼さんの講座の日常

  あらすじ;超低血圧の大学院生、菱沼聖子氏は起き抜けに少々腹痛を覚えつつ、夏休み中の大学へ向かう。到着早々培養していた最近の死亡報告を受けたり、主人公+チョビに新入荷のダニを見せたり、所属している公衆衛生学講座の貧困ぶりを痛感したりしつつ、遊びに来た漆原教授などとアイスを食していたところ、また腹痛に襲われる。すぐ痛みが消えたと主張する菱沼氏だが、菅原教授の指示で病院へ向かう。

 

 一般人とは大分異なる体質の大学院生菱沼さんにスポットを当てています。所属の公衆衛生講座も実情がより詳しく描かれており、獣医学部の大学における位置なども知ることができます。細菌とアイスクリームが冷蔵庫に共存し、通常過程では駆逐したいダニもわざわざアメリカより直輸入して飼っている公衆衛生学講座。このような人々が日々研究してくれていることにより、現在医学は日々進化しているのでしょう。

 

第七話:ヒヨちゃんのお見合い

  あらすじ;相変わらず乱暴な西根家最強生物ヒヨちゃん♂。ある日友人二階堂が親戚から押し付けられた鶏雌2羽、ピーちゃんとゴンべをヒヨちゃんの嫁としてどうか、と連れてきた。しかし、最初のお見合いからお互いを蹴り合いまくる相性の悪さ。果たしてお見合いは上手くいくのか。

 

 今回メインはヒヨちゃんですが、主人公の友人二階堂の衣装柄にも注目です。2話程前から様々な柄のシャツを着ている二階堂。一つ一つの柄が手描きのようです。今回は4種類!薔薇から始まり、キツネ仮面、きょきんぎょ、最後は力尽きたのか渦巻き柄です。とにかく、佐々木氏の漫画は常に衣装をチェックし続ける必要があります。

 また、最強のヒヨちゃんがピンチを迎えるレアな回でもあります。

 

第八話:大学祭

  あらすじ;3年生になった主人公たちが本格的に獣医学部生として迎えた大学祭。牛の尻に手を突っ込む直検を目玉に”1日獣医さん”という企画の担当となった主人公達だが、場所が外れにあることもあり、例年のごとく閑古鳥である。店をたたんで焼きそばを食べに行く提案が出たところ、何故か様々な依頼を持った客が次々訪れるようになった。

 

 このお話のモデルとなった学校の大学祭は毎年世界各国のグルメを楽しめるなど活気がありますが、その世界の端っこで賑わいとは無縁の企画を繰り広げている主人公達獣医学部生です。前半はメインから外れている悲哀と諦めが伝わってきます。何故か賑わいを見せる後半も主人公達の充実感は乏しく、狐につままれた感がよく出ていて、なぜこんなに人が集まるのかの真相へと続く下りも色々な小ネタが挟まれており素晴らしいです。

 

第9話:チョビの怒り

  あらすじ;最近祖母の知り合いから預かっている我儘&かまってちゃんの犬スコシが原因でなかなかチョビをかまってあげられない主人公ハムテル。スコシの我儘被害を少なからず受けるチョビが怒っていないか気になる。温厚なチョビはそうそう怒りはしないが、日が経つにつれてスコシの我儘はどんどんエスカレートしていった。

 

 普段非常に温厚な主人公の飼い犬チョビが怒ることはあるのか?を観察する回です。さほど親しいわけでもない知合いの飼い犬スコシをのすこぶる我儘な性格により、チョビが特に割を食っていきます。スコシは、登場時は愛嬌のある表情で吠えていますが、主人公が冷静な対応を続けることにより、どんどん表情がきつくなっていきます。チョビの感情を示すコマも差し挟まれて2頭の対比を見ると面白いです。

 イライラの頂点に達したスコシへの祖母の対応は見事ですが、もともと祖母の気分で巻き込まれたものです。しかし、ここぞというときに締めてくれる祖母は頼もしいキャラです。中盤の漆原教授のスコシへの診断も最高ですし、チョビは温厚すぎて、損な役回りが多いですが、周りからとても愛されていることがわかります。

 

第十話:公衆衛生学講座へ来た小夜ちゃん

  あらすじ;漆原教授の講座から公衆衛生学講座へ移って来た小夜ちゃん。ズボラな講座生に困っていた菅原教授はよく気の付く小夜ちゃんに大助かり。しかし、小夜ちゃんは厳格な片付け魔であることが発覚する。繊細な菅原教授は、本性を現した小夜ちゃんの顔色を窺いながら怯え暮す。ある日、講座の流し場付近が水浸しになり、ガラスの破片なども散乱する事件が起こる。小夜ちゃんによる聞き込み捜査が始まる。

 

 小夜ちゃんの登場により、菅原教授と漆原教授の性格の違いが浮彫りになる会です。世間的にはきちんとしているが、その実、蚤の心臓並みの菅原教授と己の赴くままに行動する漆原教授。人生を充実させるヒントがある気がします。

 

第十一話:混ざってしまったスナネズミ

  あらすじ;学会で出張中の岡田先輩が飼っているスナネズミを預かった主人公ハムテル。ある日、自分の買っているスナネズミと混ざってしまい、区別がつかなくなった。3年近くスナネズミを飼っていてもほとんど個体の識別もできないことに気づき、ブルーになりながら、何とか分けようと試行錯誤する主人公であった。

 

 主人公がスナネズミを飼うことについての意味を見つめなおす回となっています。心通わせることの難しいペットへの気持ちと独身1人暮らしの男子大学生の切なさがわかるお話です。

 

エッセイ漫画:Making of 動物のお医者さん

 こちらでは、作者の佐々木氏が12巻分も連載し続けることができたお話のネタの源泉を教えてもらえます。一人ずつの力は少なくても、寄り集まれば大きくなるのだとよくわかります。