comicbird’s blog

備忘録として我が家所蔵の漫画を全て記録しておこうと思いつき、始めました。

家族の肖像 佐々木倫子氏

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家族の肖像

 

食卓の魔術師からの続き、シリーズ第2弾。

こちらの1冊は、主人公の家庭での紹介を済ませ、段々と学校生活のお話へと移っていきます。

 

第一話:家族の肖像

  あらすじ;節分が近くなり、黒田家では誰が鬼をやるか論争が勃発していた。ひと悶着の末、飼い犬ルイと決定。だがその後、ルイは行方不明となってしまう。検討した結果、誘拐の可能性が高く、近所の大金持ちのお嬢様が容疑者として浮上したというもの。

 

今回は人の顔を覚えられないという主人公の特徴はあまりクローズアップされません。

節分という年間行事をベースにゲストキャラのお嬢様(執事付き)を絡めて主人公の飼い犬を紹介する回といったところでしょうか。

 

まず、節分の鬼を決定する際のひと悶着が好きです。

飼い犬の心理メカニズムのミニ知識を披露し、その解釈を勘違いさせる。

アンジャッシュのすれ違いコントを彷彿とさせます。

 

そしてその後の話で、主人公勝久が飼い犬ルイをいかに心のよりどころとしているかを上手く散りばめながら描いており、それを説明するために、勝久が家庭でどのような扱いを受けているかもわかり、これで勝久の大体の日常生活がわかります。

さらにルイの微妙に変なところも絶妙。際立って変ではないが、なんか変。

佐々木倫子氏のこのセンスがまた魅力的なのです。

 

またお嬢様ですが、大金持ちのはずなのにお金持ち感を感じない!

来ている着物は大正ロマン風でとても素敵。

だが、自ら猫たちの餌を調達し、そのエサが魚のアラ!しかもただで入手‼

猫ちゃん用高級缶詰などではないのですよ。

このギャップにより、自然と印象深い人物となっていくのでしょう。

 

因みに、佐々木倫子氏の作品で人物が来ている衣装はかなり凝っているものが多いです。

動物のお医者さんの菱沼さんなどは、どこからそのお金が?と思うような服が目白押しでございます。

 

第二話:魔の席

  あらすじ:トイレの水洗・非水洗で確執のある地域に住む男女の恋物語

   ある日学校で席替えがあり、主人公は廊下側の一番後ろの席となってしまう。そこは人の顔を覚えられないという主人公にとっては魔の席。いろいろな人への取次ぎを頼まれ、その中に気になる封筒を見つける。

 

トイレの水洗とは、時代を感じますねぇ。

これにロミオとジュリエットの要素が絡まり話の幅が広がります。

壮大なテーマを馬鹿馬鹿しく日常のシチュエーションに落し込む…これが佐々木倫子氏の真骨頂です。

 

このお話から主人公勝久の学園生活を本格的に垣間見ることができます。

学校生活での人の顔を覚えられない主人公独特の悩みとエピソードが上手く関連付けられて、謎解きの要素も加わって味があります。

 

第三話:君の名は

  あらすじ:ヒグマに遭遇し、危機に陥った主人公を助けてくれた見知らぬ女性。実は主人公と同じ学校の女生徒だった。しかし女生徒の方は主人公を知っており、むしろ好き。さらに、後日学校で再開の機会があっても主人公は女生徒に全く気付かない。ショックを受けながらも女生徒は友人とドタバタしながら、主人公にアプローチしていく。

 

前回でこのシリーズ初の恋愛要素が現れましたが、今回はさらに主人公本人が恋愛に絡みます。しかしながら、全くもって甘々恋物語へと行かないところが大好きなところです。

 

人の顔を覚えられないという主人公に、印象に残りにくいと自覚している女生徒をあて、うまくすれ違えるようにしています。

 

それを解決すべく周りの人間がおのおの個性的に動く。それぞれの動きもキャラ設定ときちんと合致しており、違和感なく感じます。

 

あまり表情筋を動かさないタイプの表現方法なので、恋愛のドキドキ感などは感じにくいのですが、お話の構成などは素晴らしいと思います。

 

そしてこの頃になると絵のバランスも安定し始めて、歪みなどが減ってきている気がします。さらに衣装も彩り豊かとなっています。

 

第四話:バレリーナ:シリーズとは別の読み切り。シリーズ以前の作品と思われます。

  あらすじ;とある個人バレエ研究所で講師として働く女性と中学生の男子生徒のお話。

 

こちらなどは、女性主人公、生活大丈夫ですか💦などと心配になりながら読んでいたお話でした…というのは、置いておきまして…

 

一応恋愛ものとは思いますが、ギャグ要素の方が勝っている節があります。主人公の成人を越えた女性講師と中学生の男子生徒。それにライバル的な男性が登場し、どうなるでしょう。を軸に当時私がバレエ鑑賞にハマっていたという事情もありますが、日本のバレエ研究所の現状も描かれており、それがうまく絡み合って好きです。

惜しいのは、私が鈍いというのもあるのですが、登場人物の恋愛感情がわかりにくいかなぁというところです。私の場合は最後でやっと気付いたという…

きちんと読める人ならわかったのかもしれません…しかし、わかんなくても他の要素で十分楽しめました。

 

第五話:カルケット恐怖症

  あらすじ;子供が大の苦手な衣料品店の女性店長が結婚してお子様を持つまでのお話。

 

こちらも主人公の女性店長とお相手の男性との認識勘違いが楽しめる作品です。お互い真実にいつ気づくんだろう?と。

そしてさすが佐々木倫子氏。この作品に関しても甘酸っぱくなるような雰囲気は皆無です。終始馬鹿馬鹿しく勘違いしながら話は進行し、あれよあれよという間に結婚します。この馬鹿馬鹿しさのセンスが私の好みにジャストミートです。

言わずもがな、主人公がいかに子供が苦手かみっちり紹介してくれており、それが説明的ではなく、きちんと話の流れの中で自然とわからせてくれます。

さらに店長の子供嫌いに輪をかけた新入りの女性販売員、佐伯さんがいい味を出しております。個人的には大変好みなキャラです。

 

第六話:佐々木倫子の趣味の講座 お裁縫

  こちらのお話は佐々木倫子氏の多趣味がまた垣間見ることのできる作品です。

  加えて、ご家族、特に妹様を詳しくご紹介されています。

  妹様は今後エッセイ漫画にて何度となく登場してくださいます💕

 

  冒頭の表紙絵もレトロで好きです。エッセイ漫画ということもあり、通常作品より好きな絵柄を描けているのかなぁと感じました。

 

個人的に総括しますと、本編の画力に安定感が見られ、ますます読みやすくなっております。また、少女漫画というジャンル故、この当時は恋愛要素を入れ込む必要があったのかなぁと推測します。しかし、きちんと佐々木倫子氏流に仕上げるところが流石です。