comicbird’s blog

備忘録として我が家所蔵の漫画を全て記録しておこうと思いつき、始めました。

食卓の魔術師 佐々木倫子氏

 

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記念すべき1冊目は、佐々木倫子氏作 「食卓の魔術師」

デビュー作のようです。

知ったの何日か前ですが。全然わかってなかった。

 

ブレッブレですが、写真の表紙を見てもらえればお分かりのごとく、絵のクオリティはデビュー作ということもあり…(・・;)

しかし!話はスルメのごとく味があり、何回となく読めてしまう。

表現方法はドラマティックな画面にすることは苦手なようですので、淡白な印象になり、そこが大人気漫画となりにくくて惜しいところですが、話の構成は非常に上手だなぁと憧れます。

 

そりゃあ地味、地味です。

 

目の付け所が。

 

少女漫画で、花とゆめCOMICSでそのテーマ…大丈夫ですか(゚o゚;;

というくらい。

 

人の顔を憶えられないという主人公の地味ーな特徴で、どう広げられるんだ!話を!

そんな疑問に見事に応えてくれております。

 

第一話:ちょっとだけハードボイルド→非日常の事件に巻き込まれるパターン

  あらすじ;人の顔を憶えられない主人公が、銀行強盗の目撃者として騒動に巻き込まれるというもの。

 

冒頭は話の流れに沿って主人公の性格や日常が自然と説明されており、上手だなぁと思うのです。それから事件を起こし、主人公を巻き込ませる。

さらに主人公をその特徴ゆえに追い込ませて、どん底から最終的に解決させる。そしてオチがある。

 

程よい浮き沈みを作り出し、それゆえ飽きがこないと思われます。

 

さらにサブキャラもバランスが良い。癖の強い兄二人。

明らかに主人公より優秀な、代わりに主人公の知り合いのデータを憶えている友人。

基本主人公を翻弄する兄二人と、ある時は助けてくれ、ある時は追い討ちをかける友人。

 

主人公が馬鹿馬鹿しく困る様が個人的には性癖にストライクです。

主人公がどれだけ人の顔を憶えられないのかこの話でよくわかります。

 

 

第2話:コレクター →新サブキャラ登場

  あらすじ;人の顔を憶えられない主人公の前に現れた正体不明の人物。どうやら主人公の知り合いらしく、事あるごとに絡んでくるが、主人公にはまるで憶えがない。

 

新キャラを出させ、1話かけてその紹介をする。

推理風に話は進み、じわじわ情報を小出しにして主人公をかき回す。

主人公はその度に一喜一憂し、勘違いを重ね、追い詰められる。

絶体絶命まで追い詰められ、新キャラに救われるが、真相を明かされ、結局罰を受ける。

 

また、罰のセンスが素敵です。

新キャラも程よくトチ狂っていて好みです。

やはり2話とも話の流れに無理がないところが負担なく読めて素晴らしいと思います。

 

第3話:食卓の魔術師 →ここからゲスト的キャラ開始

  あらすじ;両親が旅行に出てしまい、家事をせざるを得なくなった人の顔を憶えられない主人公を含めた三兄弟。

誰もがやりたがらない料理の助っ人が現れる。

 

2話までに当面の主要人物は出たようなので、ここから本編スタートのような感じでしょうか。助っ人がゲストキャラですね。

 

こちらも推理風で2話目と比べてややミステリーが強目。

同じ謎解きにしても毛色を変えてきている。

そしてこの話の最初で、癖の強い兄二人のちょっとした性質の違いを示している。

長男は事前の危機回避意識が強く、次男は厄介ごとに気付いたら行動を起こすという臨機応変さを持っていることがわかる。ちなみに主人公はそのまま流されていく。

 

今回は友人のデータにもない人物。計り知れない心細さを抱え、助っ人の謎に満ちた矛盾する行動を何とか解明しようと一生懸命推理して追い詰められていく主人公。

 

そして嵐の夜という演出で訪れた絶体絶命の後の真相発表。そしてオチ。

 

2話目登場のサブキャラがレギュラー化しております。

主人公と合わせて主要キャラが三人に増え、化学反応もより面白く出やすくなっております。

主人公の友人への依存っぷりも清々しいです。

そして3話通じて主人公がきちんと追い詰められていく過程が好きです。

情報小出しの塩梅がいいのでしょう。

出し過ぎはつまらない、あまりに出さなければストレスで読む気をなくすものです。

ここが難しいのです。

 

そして家族の肖像、代名詞の迷宮へと続いていきます。

 

以下、4、5、6話はまた別の読み切り話となっているようです。

 

第4話:エプロン・コンプレックス →これが正真正銘初めて掲載された作品でしょうか

  あらすじ;兄に振り回される極上の料理技術を持つ弟。弟が主人公かと。

       料理上手がゆえに兄に色々溺愛されている弟。兄の呪縛から逃

       れ、片思いの女性とお付き合いしたいと奮闘する。

 

兄は兄の感性で弟を愛しており、その愛し方が弟には気に食わない。

この感性のすれ違いぶりがこのお話のスパイスになっていると思われます。

主人公と思いを寄せる女性だけの話にするより、話に広がりと奥行きを持たせます。

 

何より設定が好きです。舌の肥えた兄が入れ込むほどの料理技術を持つ弟!

自分で作った漫画のネームのキャラ設定もこれになってた!と気付いた(・・;)

うーん、パクったつもりは決してないのですが…気がつけば∑(゚Д゚)でした…

美味しいもの食べるのが好きなのでこうなってしまったのでしょう…

…余談でした…

 

第5話:プラネタリウム通信

  あらすじ;服飾会社で働く主人公が、何かと因縁をつけられた年下の先輩に認められるようになるまでのお話。

 

様々な妨害や意地悪にくじけず、仕返しするではなく、自分のやり方で信頼を勝ち取る。皆が皆そんなにうまくいくわけではないけれど、後味が良くて好き。

妨害や意地悪の描写が、余り嫌な感じがしないのも有難い。ここでは淡白な表現が上手く機能していると思います。

       

そして佐々木倫子氏の作品全体を通して言えるかと思うのですが、庶民感が凄い!

え!これで今後生活やってけるの⁉️大丈夫❓と心配になってしょうがなかったりする作品もございます。

この作品はそこまでではないのですが、まあ、小金持ちにも程遠い設定です。

このように金銭的には大体が一般的な庶民、または貧乏なのですが、人格は大体何がしか常識からズレております。

 

そのズレ方が地味だけれど絶妙。ありそうー、と共感できるよう上手く描かれている気がします。たまりません。

 

第6話:佐々木倫子の趣味の講座 乗馬

作者様の体験漫画。単発講座に参加したお話のようです。確か別の単行本では社交ダンスをなさっているという話もあったような。色々多趣味な方とお見受けします。

何を、どのように体験し、どんな感想だったかをわかりやすく描いており、構成力の確かさを感じます。また観察力の高さも伺えます。

 

…全くもって独断と偏見で総括すると、

絵の美しさを第一に求める人には厳しいのではないかと…

ただ個人的には、やはり画力に難があっても、お話がしっかりしており、非常に楽しめる一冊です。

ふとした時に、何度となく手にとって読んでました。

動物のお医者さんの後半以降の作品では、傍若無人キャラが度を越していく印象を受けますが、この頃は調和がとれており、大変好みです。