comicbird’s blog

備忘録として我が家所蔵の漫画を全て記録しておこうと思いつき、始めました。

昭和不老不死伝説バンパイア 徳弘正也氏1



世間の風潮では、万人には、特にお子様にはとてもお勧めされない作品でしょう。しかし!エロとお下劣と言うオブラートの下には鋭い世の中の本質をつくメッセージがぎっしり込められています。

機会がありましたら、是非ご一読頂きたい作品です。

VOL.1:マリア

あらすじ;2004年、とあるストリップ劇場の人気ストリッパーであるマリアがファンと名乗る男に脇腹を刺される。傷は瞬時に消えたが、マリアはこれからの闘いを予感し、パートナーを探し始める。見つけたのは16歳の男子高校生、本田昇平。彼は子供時代のショックから喋れないが、物を多少自由に操る能力を持っていた。マリアは昇平の下校途中脇道に引きずり込み、昇平の心に語りかけて交わる。すると昇平は声が出る様になった。

 

 続き物の作品です。インパクト充分すぎる初回です。1945年のカットから2004年に飛び、同じ容姿の女性マリアが登場します。ストリッパーとして如何にマリアが人気者か丁寧に描写されています。文章だけの説明より遥かに印象深く残ります。そしてギャグで緩んだ所に人知れず襲撃されるマリア。一気に緊張感が増します。この緩急、見事としか言いようがありません。流石の力量です。もう数ページで鷲掴みにされます。今後の展開が気になって仕方がありません。

 

VOL.2:比丘尼クラブ

あらすじ;マリアを襲った比丘尼クラブ青のマスター、十文字篤彦にマリアが本田昇平と接触した情報が入る。比丘尼クラブは重病化した要人達が、延命希望で大金を携えて日々入会に訪れる。故に比丘尼クラブにとって永遠に生き続けるバンパイアマリアは是が非でも欲しい存在である。マリアはまだ知らぬこの組織に対抗すべく少年本田昇平の能力を引き出そうと昇平に試練を与え始める。

 

 今回はマリア襲った組織比丘尼クラブの紹介があり、昇平の家族も登場です。マリアがこれから闘う組織が如何に巨大かが前半で丁寧に描写され、後半では昇平の生活環境が描かれています。街の片隅で祖母と2人、身を寄せ合って生きてきた少年はマリアと言う美しい女性によって国家レベルの陰謀の中へ足を踏み入れて行きます。前半から後半への規模の落差が見事だと思いました。

 

VOL.3:不死身

  あらすじ;昇平は予定を変更し、クラスメートに口がきけるようになった事を知らせる。その時は喜んでくれたクラスメート達だったが、結局は皆にとって都合が悪かったのだと思い知らされる。だがマリアはそれで良いと言う。与えた試練に傷付きながら見事挑んだ昇平を癒そうとした所、比丘尼クラブの襲撃を受ける。昇平は銃弾を受けたマリアの傷が見る見る回復していく様を目の当たりにする。

 

 今回は昇平がマリアの正体を知る事となります。永い永い時を生きてきたマリアです。正体を知られ、激しく拒絶された事も多々あったのでしょう。一瞬で傷が完治したのを見られた後のマリアの狼狽ぶりで、文章にせずともそれが見事に説明されています。しかし昇平はマリアを受け入れて、自分の能力をより高めるべく行動を起こします。

 

VOL.4:バンパイアの秘密

  あらすじ;刺客を倒した後、公園でマリアは昇平に自分の正体について詳しい説明を始める。マリアは改めて自分を受け入れてくれる昇平に安堵する。一方比丘尼クラブではトップの親様と最高幹部各マスター合計5名の十文字一族が揃い、八尾比丘尼の寿宝と呼ばれる御神体を掲げてお抱えの研究者からバンパイアと不老不死についての研究報告を受ける。御神体はマリアが世界第二次大戦で失った片腕であった。

 

 マリアと比丘尼クラブについて更なる情報開示です。第一話冒頭見開きで描かれていた1945年のマリアと繋がり、比丘尼クラブトップの親様が如何に異常なまでに不老不死に執着しているか丁寧に描かれています。研究者が長々と説明する様により、薄気味悪さ倍増です。必要な説明にはページを惜しみません。この塩梅が物語へと引き込ませるのでしょう。

 

VOL.5:十文字家の欲望

  あらすじ;マリアを理解した昇平は、マリアに唯一の肉親ばあちゃんに会って欲しいと頼む。その頃比丘尼クラブではトップ達5人が会合中で、トップ含む3人がマリア捕獲を急かそうとしていた。青のマスター篤彦は赤のマスター護弘を操り、マリア捕獲を牽制させる。後日昇平の祖母と対面したマリアは昇平の幸せを頼まれるも、叶えられないであろう事を心苦しく思う。

 

 前半で十文字家の対立構造が明らかとなります。親様&美宝子&ひとしvs篤彦&護弘となって、更にその中でも様々な思惑が絡み合っているであろう事を篤彦と護弘のやり取りで説明されています。後半はマリアと昇平の祖母との対面シーンで、束の間ほんわかした気持ちになれます。マリアの昇平を大切に思う気持ちと心苦しく思う気持ちが痛いほど伝わってくるお話です。

 

VOL.6美しい星

  あらすじ;昇平の部屋で交わりながらマリアは回想する。先代マリアは新たなマリアを1946年に自然の奥深くで産み、成長したマリアは先代マリアの死を見つめ続ける。そして今までの記憶と向き合い、この星の美しさに感動する。マリアは昇平にパチンコ玉が入ったトイカプセルを渡して、パチンコ玉だけをより速く動かす訓練を課す。昇平はより強くなるため、以前ボコボコにされたクラスの不良を呼び出し、戦いを挑む。

 

 マリアの出生が美しい自然と共に紹介されています。人知れず行われなければならない自分の出産。人の手が全く入らない壮大な自然美が素晴らしい画力でこれでもかと描写されています。そしてマリアが先代の自分と向き合うシーンは圧巻です。自分の死んだ後、身体がどうなっていくのか見続けたマリア。死と生きるという事を深く考えさせられます。

 

VOL.7:古田篤彦

  あらすじ;今日もマリアはストリップ劇場で踊り、贈り物をもらう。一方十文字篤彦は帰路に着いていた。篤彦は旧姓を古田と言い、十文字グループトップの次女と婿養子の形で結婚した。10歳までマリアに育てられた篤彦はある時十文字グループでマリアの片腕を見つけ、マリアを十文字グループから守る為だけに十文字グループに入った。そしてストリップ劇場の常連に、密かに十文字グループの情報をマリアに渡してもらう様頼んでいた。

 

 十文字グループ青のマスター篤彦の過去が紹介される回です。特に今回は篤彦の表情が秀逸です。マリアの片腕と対面した時、部屋で1人マリアを懐かしむ時、どうすればここまでドンピシャな表情を描けるのか驚愕してしまいます。更に新キャラ、篤彦の妻愛子とストリップ劇場常連梅津のおっさん登場です。今後どう絡んでくるか楽しみです。

 

VOL.8:闇の霊神会

  あらすじ;マリアから比丘尼クラブについて教えてもらった昇平は、何故マリアの存在に気づいたのか不思議に思う。マリア曰く、どう気を付けて生きていても痕跡は残ってしまうと言う。昇平はマリアの前回のパートナーや闘いについて知りたがる。前回のパートナーは古田タミという予知能力を持った女性を鍛え上げ、オカルト教団『闇の霊神会』を襲撃したと言う。

 

 篤彦の戸籍上の母親、古田タミ氏が回想シーンにて登場します。篤彦がどの様な経緯で10歳までマリアに育てられることになったのか紹介されています。前回は篤彦の視点で、今回はマリア側からのアプローチとなり、篤彦のより詳しい経歴が解り、深みも増します。読者を飽きさせず、物語へ更にのめり込ませる素晴らしい技術です。そして当時の世相などを盛り込みながら、マリアの愛すべきキャラクターが描かれています。

 

暴れん坊の華麗なる仕事:血だらけの迎賓館

 エッセイ漫画になります。初回は背景の資料入手方法が紹介されています。細かく描き込まれた素晴らしい背景。あのクオリティに仕上げる為の並々ならぬ努力を知る事ができます。