comicbird’s blog

備忘録として我が家所蔵の漫画を全て記録しておこうと思いつき、始めました。

ぺパミント・スパイ1 佐々木倫子氏

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全二巻。 一つの題名を冠しての初の連載と思われます。

 

第一話:ぺパミント・スパイ

 あらすじ;情報部員にあこがれる主人公が、大々的に募集を敢行したスパイ養成学校に無理やり入り込み、入学するまでのお話。

 

主人公はなかなかの傍若無人キャラです。佐々木倫子氏の作品には珍しく、テンション高めの主人公でもあります。この連載により”動物のお医者さんの漆原教授”や”HEAVENの女性オーナー”などの人を振り回すキャラが練り込まれていったのではないかと推測します。

こちらも少女漫画でしょうか??という位、美少女も惚れた腫れたもほぼ出て参りません。

頑張って少女漫画テイストを探すならば、スパイ養成学校のイケメン風委員長でしょうか…。登場する女性は多分養成学校の校長秘書のみかと思われます。そして感動するほどでもない容姿の主人公。むしろ人としてどうなの?という性格。あとは初老の校長とゲストキャラの男性スパイ。

素晴らしい…なんという素晴らしい布陣!少女漫画ジャンルに全く迎合する気のないこの内容‼そして白泉社様の懐の深さデス❣今時この内容で載せてくれる少女漫画雑誌ってあるのでしょうか。この時代ならではのような気がします。

一応推理テイストでスリルとサスペンスあり。しかし、決してシリアスにはなりません。

 

今までの作品も一貫してそうなのですが、登場人物の人柄などを説明する時のエピソードが秀逸すぎます。なんかズレてるけどある、あるわ!と思えるのです。これがまさにスルメのごとく味があり、クセになります。

 

第二話:ぺパミント・スパイ(サンセット市街編)

  あらすじ;この度スパイ養成学校より特別任務を与えられた主人公と委員長。字サンセット市街の新型魚雷の設計図の入手を目指す。学校教師という肩書で潜入したところ、同日、同肩書で女性がもう一人この街に入り込んできた。女性は何者か、その目的は?

 

第一話で主要キャラの紹介は終わり、この回からゲストキャラが登場します。美人女性ですね。多彩な衣装で楽しませてくれます。本当に女性の衣装は格別気合が入っております。ジャンル的には推理サスペンスでしょうが、内容はやはり馬鹿馬鹿しいです。

主人公の人格的イカれ具合と女性ゲストキャラのぶつかり合い。女性もなかなかの強烈キャラです。そして委員長の要領の良さ。素晴らしい化学反応が起きています。

放っておくと瞬く間に暴走する主人公。しりぬぐいをする委員長。

 

このお話では委員長の素晴らしき資質が存分に発揮されています。自分に与えられた理不尽な状況を受け入れ、その中で最善を尽くす。相手(主人公)を責めることなく、良いところきちんと見つけ、それを活かすよう知恵を絞っています。素晴らしい上司となることでしょう。

 

最後に申し訳程度に女性ゲストキャラの委員長への気持ちが、辛うじて”ああ、これは少女漫画なんだ”と感じさせてくれます。

 

第三話:ぺパミント・スパイ(王室恋愛編)

  あらすじ;校則禁止のアルバイトをしている主人公。皇太子妃候補の中からお相手を特定するのがお仕事。大本命の女性とはコンタクトが取れず、他の候補を検討していたところ、ほぼ可能性のない最下層クラスの女性候補と知り合う。大本命と最下層女性が幼馴染だと判明し、主人公は大本命と会わせてもらうことに成功した。

 

イギリス王室の結婚をイメージしたお話と思われます。今回のゲストキャラは皇太子妃候補二人です。一人は大本命、一人は箸にも棒にもかからないという世間の評価を受けています。

こちらのお話では階級社会の人々の考え方を垣間見ることができます。大本命は公爵、もう一方は男爵です。二人は親しいですが、階級に大分差があり、生活の仕方もかなり違うことがわかります。そうすると、世間的に王室にふさわしい空気を身にまとうのはおのずと大本命になってくるのでしょう。しかし人の気持ちはそう単純にも行きません。王室から皇太子階級社会から皇太子妃候補二人、それと一般市民階級の主人公たち。それぞれの絡み合いが面白いです。

 

第四話:ぺパミント・スパイ(王室結婚編)

  あらすじ;無事皇太子の婚約が決定し、結婚式の準備が進められていた。貴族とはいえ、ほぼほぼ上流階級とは言えない生活をしていた男爵令嬢。王室の考え方などについていけるはずもなく、ストレスがたまる一方。王室付のボディーガードを解約し、主人公にボディーガードを依頼。そんな中、結婚式でテロ発生の可能性が高くなってきた。主人公たちは阻止するため、捜査を始める。

 

余りに大きな組織の中で個人を保つのがいかに大変かわかるお話です。男爵令嬢は今までの環境とあまりに違うため最初は反発が目立ち、自我を押し通そうとします。

しかし王室という長年培われてきた巨大組織では、とても太刀打ちできません。

たとえ皇太子といえども自由には助けられないのです。

しかし彼女はこの世界で今後生きていゆかなければなりません。彼女は行動を起こし、主人公という外部の人間と交流を持ち続けることに成功し、主人公の考え方に触れることなどによって、彼女なりの妥協点を見つけ出すことができました。きっと一人では気づくのにもっと時間がかかったでしょう。その間のストレスもはかりしれません。

 

 このお話では人が追い詰められたとき、どのように対処すればよいかのヒントがたくさんある気がします。大筋は馬鹿馬鹿しいです。その中に人生のヒントがさりげなく込められている。このそこはかとないところが大好きなのです。

 

第五話:佐々木倫子の趣味の講座 社交ダンス

 食卓の魔術師で紹介されていた乗馬をやめた後に開始した趣味の紹介漫画です。

幼少期のエピソードから社交ダンスを習うまでの過程が示されています。

 

 こちらのお話では、佐々木倫子氏が人の輪の中で周囲に染まることなく、自分流でいられる人だということがわかります。

 とすると今回の単行本ですと主人公、”動物のお医者さん”ですと漆原教授と菱沼聖子さんを足して2で割ったような性格に近いのではないでしょうか。

 また、今回も妹さんがイジられながら紹介されています。以前お母様の紹介もされていましたが、大らかなお母様に大らかに育てて頂いたのではと感じました。